対話のチカラで事業承継で事業承継を支援する『承継対話支援士®』の鹿島です。
国税庁の有識者会議で行われていた中小企業の株式の評価方法の見直しが白紙になりましたが、結論がどのようになるのかわかりませんが、国税庁は株価の評価を高くして、事業承継にかかる税金を取りたいんだなぁということは分かったので、近い将来、税負担が増えてしまう可能性がありそうですね。
事業用不動産は「会社が使い続けられるか」を軸に考える
事業承継では、株式や代表者を引き継ぐだけでなく、工場・店舗・事務所など事業に必要な場所を、承継後も会社が安定して使えるかを確認します。中小企業では、社長個人が土地を所有し、その上に会社が建物を建てて事業を営む形が見られます。この場合、経営権と事業拠点の所有権が別々に承継される可能性があります。
そのため、事業に不可欠で代替しにくい不動産は、今後の取得時に法人所有を優先して検討する、という提案には合理性があります。主眼は「法人名義なら得をする」ことではなく、「後継者が会社を引き継いだ後も、事業に必要な資産を会社の意思決定で使い続けられる状態を整える」ことです。不動産の保有状況や活用方法は、事業の方向性や税務負担にも影響します。
個人所有で会社から家賃を得る形にも利点がある
個人が不動産を所有し、会社に貸す方法にも利点があります。経営者個人に賃料収入が入り、事業と不動産を別の資産として管理できます。また、事業は後継者に、不動産は別の家族に承継させるといった資産配分を検討できる場合もあります。
ただし、会社から見れば賃料は継続的な負担です。賃貸借契約、賃料の根拠、支払いの記録、修繕費などの負担者を明確にしておく必要があります。適切な賃料を支払い、個人と法人の資産・経理を区分して説明できれば、個人所有であることだけで経営者保証の解除が否定されるわけではありません。
一方、先代経営者の退任や相続後も会社がその不動産を使い続けられるかは、別途確認が必要です。相続人や共有者との調整、契約更新、賃料の見直しが経営課題になることがあります。個人所有を続けるなら、承継後の賃貸借を含めて設計しましょう。
法人所有が経営者保証の見直しにどう関わるか
経営者保証の見直しでは、法人と経営者個人の資産・資金の区分、法人の資産や収益力による返済可能性、金融機関への財務情報の適切な開示などが検討されます。事業用不動産を法人で所有することは、事業に必要な資産を会社に集約する一つの方法です。
ただし、法人所有にすれば保証が自動的に解除されるわけではありません。物件取得のための借入れで返済負担が増えれば、会社の財務や返済力に影響します。保証の解除や後継者に新たな保証を求めるかどうかは、金融機関との協議事項です。会社の借入れを承継後も返済することと、後継者が個人財産で返済責任を負うことは区別して説明します。
また、個人保証と不動産に設定された担保も別の論点です。保証が解除されても担保が当然に外れるとは限らないため、借入契約や担保設定をそれぞれ確認します。事業承継を実行する前に金融機関に相談することをお勧めします。
将来のM&Aでは、事業拠点の権利関係が確認される
第三者承継やM&Aでは、買い手は事業に必要な不動産を誰が所有し、どの条件で使用できるのかを確認します。事業用不動産が経営者個人の所有であれば、株式を取得しただけでは買い手に不動産の所有権は移りません。賃貸借を続けるのか、別途売買するのかなど、利用条件を調整することになります。
一方、会社が所有する不動産は、株式譲渡後も会社の資産として残ります。事業と拠点を一体として引き継ぎやすくなる点は、法人所有を検討する理由の一つです。ただし、買い手は不動産だけでなく会社全体の資産・負債や契約関係も調査します。老朽化、修繕負担、担保、遊休部分などがあれば、買収判断や条件に影響することがあります。
したがって、「法人所有ならM&Aで必ず売りやすい」とは言えません。事業に不可欠な不動産と、余剰・投資用不動産を分けて考え、会社全体を譲渡するのか、不動産を別に扱うのかも含めて出口を検討します。
個人から法人へ移すときの注意点
すでに個人が所有している不動産を会社へ移す場合は、単なる名義変更として扱えません。売買価格や譲渡所得、法人側の取得費用、不動産取得税・登録免許税、借入れや担保の扱いなどを確認する必要があります。関連当事者間の取引では、価格や賃料の妥当性を説明できることも求められます。
さらに、法人が不動産を持つことで、会社の資産や株式評価が変わる場合があります。法人所有が相続税や自社株評価を必ず下げるとは限らず、個人所有の土地について小規模宅地等の特例を利用できる場合もあります。制度の適用には宅地の区分や事業継続などの要件があるため、法人へ移す場合と個人で承継する場合を分けて試算します。
法人所有が向きやすいケースと、個人所有を残す選択
法人所有を優先的に検討しやすいのは、工場や店舗など事業に不可欠な不動産である、後継者以外の相続人が不動産を取得する可能性がある、第三者承継も視野に入れている、会社に取得・維持する財務余力がある、といったケースです。
反対に、会社が取得すると過大な借入れが必要になる、個人に賃料収入を残す合理性がある、個人所有による相続上の選択肢を検討したい、将来の買い手が不動産を必要としない、といった場合は、個人所有と適切な賃貸借を続ける方法もあります。所有名義だけでなく、後継者、相続人、資金繰り、担保、承継後の利用条件を合わせて比較します。
ブログ記事にまとめる際の結論
まとめると、基本的に法人で使う資産は法人の名義することをお勧めしますが、個人所有にする利点もあるので、何を重視するのかは、関係者で早めに相談することが大切です。
事業に不可欠な不動産は、会社が承継後も安定して使えるよう、今後の取得時には法人所有を優先的に検討する。個人所有を続ける場合は、家賃収入だけでなく、契約の継続、相続人との調整、経営者保証、将来のM&Aでの利用条件まで整えておく。
判断の順序は、事業に不可欠な不動産の洗い出し、所有者・借入れ・担保の確認、個人所有なら賃貸借条件の整理、法人へ移す場合の税金と資金繰りの試算、金融機関との保証・担保の協議、M&Aや相続を含む承継後の利用計画、という流れが実務的です。個別の税務・法務・融資条件は異なるため、移転や承継の実行前に税理士、弁護士、司法書士、金融機関などと確認します。
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